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幸福も過ぎ去るが、苦しみもまた過ぎ去る。
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読書に目覚めてどこかで「"必要"の意味を真面目に考えねば」と思うようになった。

基本的な単語ほどそれそのものを問う隙間が日常のなかで視界に入らないもので、「必要」という言葉も他のいろいろな言葉の「意味をつくる方」であって、つまり辞書でいう「用語説明欄に頻出する単語」でその単語をあらためて辞書で引いても得られるところが特にないようなものなのだ。
辞書というものは全く経験のない単語に自分の経験を参照できるような(それは「そのような自分の知ってる単語を使って」ということだが)意味を与える手がかりにはなっても、またある単語に自分の経験が豊富につまっているとしてその経験から出力できる意味が世間一般から外れている時にそれを正す役割を担うことはできても、自分の経験により厚みを獲得している単語にさらなる厚みを加えることはできない。
だから基本的な単語は辞書で調べてもしょうがなくて、例から話を戻せば「辞書で調べるような行為一般」つまり「大きな(広い)もの」を参照するのは今回のようなことを考えるにおいて出だしの方向性が違うということ。
同語反復も甚だしいが「自分にとっての必要」とは全く個的なもので、「自分にとっての必要」が「みんなが必要としている(考えている)こと」と一致することがあっても、その一致は最初にあるのではなくて後から気付くものだ。と言って「みんなの必要」があって「自分にとっての必要」が生まれることも日常にはたくさんあるはずだと言いたくなりそうだが、それにしても「みんなの必要」が「自分の必要」を生み出すまでには個的なプロセスがあるはずで、それを飛ばして両者を必然にように直接繋げるような発想が「自分の必要」の範囲を無闇に拡げることになっている。

それはいいのだけど、「本当は必要というほどでもないことを必要と言う」ことに、確かに大きな意味はあるのだがそれはどこか誠実でないと思うようになった。
それがいけないことではないし、「本当の必要を見定める眼が濁る」こともその大きな意味に含まれているのだが、その濁りを認識しない一方で局所的に潔癖症が発揮されるバランスの悪さも不健康だとは思う。
ただ言いたいのは、僕は「"必要"の意味をはっきりさせておく」ことは「世間で必要と言われているがじっさいそうでもないもの」の価値を貶めることではないし、逆に必要でないものを「不必要だから切り捨てる」という一見まっとうな判断が巡り巡って自己の存在を危うくするような抑圧システムを起動させないためにもいいだろうということ。

ある一面で矛盾していて、別の一面で理に適っている状態はよくある。その状態が実際的に安定している場合が多いことこそ「矛盾」の面目躍如たるところなのだが、落とし穴といえば、その矛盾を抱えることが要求する体力が足りないばかりに矛盾をそれと認識しないで安定だけ享受してしまうことができる所で、人智の敵わぬ抑圧システムが「どっこいしょ」と腰を上げる瞬間がここにある。
Y染色体はX染色体に比べて著しくサイズが小さい。全部の染色体の中でも最も小さい。しかもY染色体上に配置されている遺伝子の数もきわめて少数で、かなりの部分が無意味な反復配列であることがわかっている。それに対してX染色体の方は非常に大きく、生存のために必須な重要な遺伝子が目白押しに並んでいる。血液凝固の遺伝子、色覚の遺伝子、免疫細胞を作るのに必要な遺伝子などいずれも重要な遺伝子である。X染色体を少なくとも一本持っていなければ生まれてくることさえできないことがわかっている。どうやら、Y染色体の方は他には重要な役割がなく、なんとかして男というものを作り出すためにだけ存在しているという印象を受ける
多田富雄『生命の意味論』p.104-105
余剰を生むのは余剰しかないのであって、「生む」を「創る」と言ってみたり「余剰」を「男性性」とか「文化」とか言ってみたりするのも必要ではなく余剰の側だ。
余生も「よじょう」と読めばいいと思う。

+*+*+*

『生命の意味論』が多田氏の著作で初めて読んだ本になるのだけど、免疫学が思っていた以上に面白い事を発見してしまった。(まあ「大して何とも思っていなかった」場合にも「思っていた以上に」という言葉が嘘ではないことは論理的に正しいことは指摘しておこう)
そういうわけなので多田氏のタグを新たに設け(実はタグの付けられた諸氏は「ジャケ買い」対象著者なのである。へえ)、機会があれば別の著作もずんずん読んでいこうと思う。
さしあたり次は『免疫の意味論』かなあ、こっちが先に出てたみたいだけど。
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