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幸福も過ぎ去るが、苦しみもまた過ぎ去る。
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パナウェーブが世間を騒がせていた時、マスコミは彼らを「不気味な白装束集団」と呼んでいた。
「共産ゲリラに電磁波で攻撃されている」とか、わけの分からない理由で、山の中を迷走している集団がいた。(…)
「わけの分かんないこと言ってるな」は、判断の保留である。それが、「不気味だ」になったら、もう結論は出てしまっている。だから当然、「わけ分かんない」と「不気味」の間には、なんらかの思考処理があるのである。いかなるものか? 私は、「バカげたことを言っている」という断定が抜けていると思う
「わけの分かんないことを言っているな」は保留である。相手の言うことが分からないのは、相手の言うことが矛盾して「わけが分からない」になっているのか、それを受けるこちらに、相手の言うことを理解するだけの思考能力がないのかの、どちらかである。(…)「不気味」かどうかは分からない。だから、「不気味だ」という断定をする前に、もう一つのステップが必要になる。それは、「こっちはバカげていると思っているが、向こうは"バカげている"と思っているのかどうか?」という判断である。

「批評言語としての日常言語」(『橋本治という行き方 WHAT A WAY TO GO!』p.130-131)
「不気味だ」は曖昧な印象を表現しているだけに見えるが、じっさいはイメージの断定である。
そしてハシモト氏が「"バカげたことを言っている"という断定が抜けている」と言う意味は、「不気味だ」という発言にはその集団と関わりたくない、距離をおいて遠巻きに眺めておきたい(がニュースのネタにはしたい)という態度が顕れているということで、逆に言えば「バカげたことを言っている」という発言は体を張った発言なのだ。
その「不気味だ」というマスコミや内閣(の閣僚も言っていたらしい)の断定を真に受けて「ホント、気味悪いわよねえ」と世間話に用いられるのも無理はないのだが、その傍観者的価値観は日常の他の場面ともつながっている。
「そんなバカげたことを信じている連中なんだから、「バカげている」なんて思っているはずがない」と決めつけるのは、早計である。もしかしたら、「バカげている」という批判に出合わなかったから、平気で「わけの分からないところ」へまで行ってしまったのかもしれない──という可能性だってある。
論理の矛盾」を指摘されなかったら、論理の「矛盾」に気がつかない。更には、「論理の矛盾」ということが存在するのかどうかさえも、気がつかない。それを気づかせるのが、教育というものである。そういう教育は、あるのか、ないのか? 「あなたの言うことには、矛盾がある」と言って、その相手から、「そんなこと言ったって、言うのは個人の自由だろう」と言い返されてしまったら、多くの人は、そこで言葉を失う。残念ながら、そういう日本の現状はあるだろう。

同上 p.132
この「教育」とは広義の教育で、「日常のあらゆる場面が教育(的)である」と言う時の教育だと思うのだが、これが今の日本ではどんどん減っていて、そして減っているのは「教育の機会」ではなく「教育の必要性」だと思う。
「幼児的な大人」の増加が指摘されていて、それが「戦後65年の平和の代償」などとウチダ氏は言うが、要するに「必要でないものはどんどん端折って易きに流れる」で消費至上主義と高度に発展したシステムへの依存が個人の内実を不問にする価値観を増長させていて、「抑圧すると病は別の形で徴候化する」というフロイト的な話に繋げられそうだけど今言いたいのはこれではなくて、言葉を大事にしなくてはならないという僕の年来の思いの中にある「確固とした論理性の構築」(と同時に「論理を超えた身体的な言葉の力」というのもある)が通常思われているような「客観的視点(思考)への志向」にのみ結びつくものではないということだ。
「自分を消す」のは「消そうとする自分」であって、透徹した思考の追求の過程で必然的に噴出してくる主観があり、両者を「うねる双龍」のごとく前へ前へと駆り立てる言葉の運用法(術?)が恐らくはある。
「価値観の違い」という思い込みが、「批判」を成り立たなくさせる。その結果、「論理の矛盾」が指摘されなくなる。「論理の矛盾が指摘されない」とは、「論理を構築する必要を感じないまま放置される」ということでもある。「なにバカげたことを」が、社会から減少するのは、大問題だ。
同上 p.134
大問題だ、というハシモト氏の認識に同感で、しかし当面一人でつらつら考える自分はその大問題の(社会的な)解決にはあまり興味はなくて、ただ今の自分に必要なのはこの大問題だという認識を自分の中で前提にすることで、何のどのような解決に向かうのかは知らないが、まずこの大問題は「自分の問題」なのである。

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