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幸福も過ぎ去るが、苦しみもまた過ぎ去る。
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構造主義の役得について。

構造主義という哲学の分野がある。
日常的な意味としては「物事の仕組みに目を向ける思考方法」くらいに考えている。
冷静にかつ客観的に考える方法としてかなり有用だと思い、「構造主義」という名前に飛びついて何冊も本を読んできた。
橋爪大三郎氏の『はじめての構造主義』がよい入門になって、思えば現代思想という大枠に興味を持ち始めたのも構造主義がきっかけかもしれない。
最近はやっと『悲しき熱帯』を読み終えたところ。
未開の地(ではなく実際は先進国の物資や疫病が浸透していた)での文化人類学者の奮闘はその逐一がスペクタクルではあるのだが、見所はやはりレヴィ=ストロースが帰って来てからの思考の部分だ。
そう、氏は帰ってきたいと思い、そして帰ってきたのだった。
欧米の自文化中心主義を戒める語勢が強いのは確かだが、それがそのまま後進文明の礼賛につながるものではない。
人の価値観は育った文化の影響を避けようなく多大に受け、しかし人類学者は自分の文化を捨てて別の文化に溶け込む。溶け込みつつその文化の仕組みを探り価値付けるが、現地の素晴らしさの対照として自文化を反省的に眺めるその眼は既に濁っている。自文化を批判的に考察できるそのことが自文化の(自浄作用としての)優越性を示してしまうジレンマ。このジレンマを抜け出す道が、まさに「道」にあった…下巻の最終章で仏教に関する体験を交えた記述があって、「世界は人類なしに始まったし、人類なしに終わるだろう」か確かそんな風だったかの有名な一句に向かうまでの記述こそが僕の心に強く響いた、と思ったのは確かだがそれはその一句を書評やらで何度も見た経験があるからに他ならない。

といった感想はもののついでであって、書こうと思ったのは自分なりの「構造主義」というものの位置づけについて。

…きっと続きます。
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